やまと世代SG初制覇!山口剛が時代の扉を開く
山口剛がSG初制覇を果たした10年ボートレースクラシック。これは山口の初タイトルというだけにとどまらず、「やまと学校卒業生による初のSG制覇」という大きな意味をもつものでもあった。山口が新しい時代の扉を開いた一戦だったのだ。
やまと学校を卒業した最初の期は88期だが、入学から卒業までをやまと学校で過ごしたのは90期から。その90期以降を「やまと世代」と呼ぶわけだが、この数年ほど前からSGに顔を見せるようになり、新時代の息吹きはじわりじわりと漂ってはいた。このクラシック、優勝戦1号艇はやはりやまと世代の岡崎恭裕。山口は2号艇とやまと世代が内枠を占めるSG優勝戦となった。3号艇には王者・松井繁。4号艇には地元の大エース・濱野谷憲吾と、世代闘争の構図もできあがっていた。
山口は進入から魅せる。スタート展示は枠なりだったが、本番では鋭いピット離れを見せて、インを奪ってみせたのだ。バックでは、先マイした山口に、差した濱野谷がまだまだ若手に勝たせるわけにはいかないと迫る。2マークで山口は渾身のツケマイに出るが、濱野谷はそれにきっちりと合わせて前に出さず、ここで決着がついたようにも見えた。しかし、機力抜群の岡崎が2周目ホームでぐいぐいと伸び返し、1マークでは濱野谷と競るかたちに持ち込んでいる。山口はその展開を冷静に見極め、岡崎と濱野谷が流れた内側に的確な差しを突き刺した。これで一気に二人を抜き去り先頭へ。やまと世代に初めて、SGタイトルをもたらすことになったのである。
この次のSGとなったオールスターでは、岡崎が雪辱を果たすSG初制覇。さらにオーシャンカップでは石野貴之がSG初制覇を果たし、この年は一気に3人のやまと世代SGウイナーを出すことになっている。
新時代の到来を確実なものとしたのだ。あれから5年、いまや彼らがSGを勝つのは普通のこととなり、やまと世代は死語となった。そんな時代の端緒を切ったのが、山口剛のクラシック制覇だったのだ。
ついに、ついに獲った!誰もが待ち望んだ白井英治5 のSG制覇
いまだ記憶に新しい、白井英治のSG初制覇。「SGにもっとも近い男」と言われて幾星霜。いつタイトルを獲ってもおかしくないと言われながら、なかなか届かなかった栄冠。
白井のSG載冠は、本人にとっての悲願であるだけでなく、多くのボートファンの悲願ともなっていた。それがついにかなった、14年ボートレースメモリアル。近年、あれほどまでにウェットなSG初制覇は見たことがない。
白井のSG初優出は01年ダービー。
これが2度目のSG出場だった。SGに出始めていきなり活躍を見せた白井の実力は、多くの人の目に留まることとなり、未来のSGウィナーたる下馬評はこのときすでにできあがっていたと言える。それから白井はSG優出を重ねていった。05年クラシック優勝戦FでSGから遠ざかる期間もありながら、このメモリアルが実に14回目のSG優出。それは白井の実力をあらわすと同時に、いかにタイトルに恵まれない日々を送ってきたかの証明でもある。
このメモリアルで、白井は好モーターを手にしている。序盤は3走して1勝2着2回。初戴冠の予感を漂わせる足色であった。しかし、4走目で落水失格。一気に暗雲が漂うこととなっている。ツイていたのは落水だったことか。モーターは水に濡れることなく、機力は維持された。
そして、その後は暗雲を振り払う2勝2着1回。白井は優出を果たした。
優勝戦、1号艇が谷村一哉、2号艇が白井、3号艇が寺田祥と山口勢が内枠を独占した。このうち誰かが勝てれば、というコメントも聞かれたが、しかしそれぞれに勝利への渇望は強かった。1号艇の谷村は枠的に負けるわけにはいかないし、寺田は本番で敢然と3カドに引いている。
そんななか、白井はコンマ00のタッチスタート!スリット後は一気に谷村を交わして、ジカまくり一閃。
強い気持ちで、悲願という言葉では足りないほどに望んでいたSGタイトルを手にすることとなった。
出迎えた師匠・今村豊の涙も印象深い白井のSG初制覇。次にこの感動を味わわせてくれるのは誰だろうか。