SG初制覇名勝負 グランプリシリーズ攻略 パート1

グランプリでSG初優勝!吉田元浩が博多で劇的V

グランプリ史上初めて、福岡ボートで開催された第22回大会。ここでSG初制覇を果たしたのは、吉川元浩だ。
吉川元浩が博多で劇的V2007年ランスは複製
グランプリは、全員が初出場だった第1回を除いて、「初出場者は優勝できない」というジンクスが有名だった。他のシリーズにはない、短期決戦のトライアルシステム。その年のトップ12 (当時)が集結する最高峰の一戦。初体験の選手にはハードルが高いという認識があったわけで、事実それまでの歴史がそのジンクスを証明していた。
この年のグランプリ戦線をリードしたのは、まず湯川浩司。トライアルは3戦連続1号艇ということもあり、快調にポイントを重ねた。85
期の同期生である井口佳典もトライアル2勝。銀河系軍団の雄がトライアルをおおいに盛り上げたかたちだ。
もう一人、2勝2着1回の好成績をあげていたのが吉川。トライアル3戦は6コースから豪快にまくり差しを決めており、文字通り自力で優勝戦1号艇を獲得するかたちとなった。
その吉川も含め、優勝戦1~3号艇がグランプリ初出場の選手。何やら波乱の予感も漂うファイナルとなっている。
レースは、井口と湯川が1マークで激しく競り合う展開で、両者は早々と圏外に去っている。そんななかで吉川は動じることなく堂々とイン逃げ。
後続の追撃を許すことなく、先頭ゴールを果たした。ジンクスをも打破するSG初優勝。ピットに戻った吉川は、出迎えた鎌田義とがっちり抱き合って、はばかることなく号泣している。
グランプリ前、吉川は鎌田に喝を入れられたという。グランプリを前にして様子がおかしくなっていた吉川に、「いつもの吉川さんで戦えばいいじゃないか」と涙ながらに叱貴”されたというのだ。それで吹っ切れた吉川は、グランプリを平常心で戦い抜き、黄金のヘルメットに辿り着いた。レース後の抱擁は、そんな二人の友情の深さをあらわすものでもあったのだ。

歴史に残る名勝負!丸岡正典がスーパー激戦を倒す

21世紀に入ってからのベストレースを投票してもらい、選出している。堂々のトップに選ばれたのが、08年ダービー。丸岡正典のSG初制覇となった一戦だ。
なぜ皆の支持をそこまで集めたかといえば、何と言っても、「丸岡正典vs瓜生正義」のデッドヒートだ。
まるまる3周、びっしりと競り合った丸岡と瓜生。20世紀にまで枠を広げれば、あの95年グランプリの「植木中道」が至高の名勝負と称えられるが、それに匹敵する大激戦を丸岡と瓜生が演じたのである。
「植木中道」と違うのは、抜きつ抜かれつの接戦ではなく、「攻める瓜生、受け止める丸岡」という構図が3周続いたことだ。木村光宏の前付けで、4カドを獲った瓜生は、スリットからぐいっと伸びて内を攻める。
丸岡はそれを牽制しながら全速で先マイ。瓜生はまくり差しにチェンジして、丸岡に抽先をかけていった。
デッドヒートはここから始まった。
2マークは、内に陣取る瓜生が先マイし、丸岡は差し返し。
内に丸岡、外に瓜生の態勢で、並走状態となっている。2周1マーク、瓜生は渾身のツケマイ!それを受け止める丸岡!並走のまま
2周2マークに突入し、瓜生はふたたびツケマイを放ち、丸岡はやはりこれを受け止めている。3周目ホームは丸岡がやや先行したが、
瓜生は1マークでもういちどツケマイ。決まってもおかしくないタイミングだったが、丸岡はこれをなんとか受け止めて、瓜生を前に出さなかった。3周2マークでは瓜生は差しを選択し、丸岡のふところをえぐりにかかったが、丸岡がしっかりと先行して、コンマ2秒差で先頭ゴール。
旋回技術に長けた両者が一瞬たりとも気を抜くことなく、持てる力をぶつけ合った、珠玉のデッドヒートだった。
ピットで見ていた松井繁が「立派なレースだった」とゴール後に呟いている。王者をも嘆息させるハイレベルな一戦だったのだ。